PathのPC上で獲得した潜在ユーザを逃さずモバイル上のストアに誘導するグロース・ハック
PathのPC上で獲得した潜在ユーザを逃さずモバイル上のストアに誘導するグロース・ハック
皆さんは、スマホのアプリからシェアされた写真やコンテンツをTwitterやFacebook上で見かけて、「私もこんな写真共有アプリを使ってみたい」と言った思いにかられ、その共有元のアプリをインストールしたいと思ったことがあるでしょうか?
その際、TwitterやFacebookをMacやPC上で閲覧していたとしたら、皆さんはどうしますか?
即座に自分のスマートフォン上のAppStoreやGoogle Playを開いて、アプリを検索しましたか?本当にそのアプリが魅力的であれば、恐らくそうするかもしれません。でも少し面倒ですね。AppStoreやGoogle Playへのリンクをコピー&ペースとして、モバイル上で確認できるメールアドレス宛に送信しますか?なかなか手が込んでいて、これも面倒ですね。デスクトップ上からモバイル上への移動が面倒なために、ここで離脱してしまい、その後インストールすることを忘れてしまったことはないでしょうか。こういうケースが、ほとんどなのではないでしょうか。
最近3.0にメジャーバージョンアップをして話題のPathは、これをシンプルで強力な方法で解決しています。
まず、MacやPC上で、誰かが共有した写真等のコンテンツを開いた場合、次のようならランディングページが生成され、共有されます。Pathでは、このページの右上に、次のようなダウンロードボタン(青色のボタン)が表示されます。
このボタンをクリックすると、「SMSで携帯電話に送信」するためのフォームが表示されます。
ここに自分の携帯電話の番号を入力し、送信すると、AppStoreへのリンク付きのメッセージをSMS経由でモバイル上に送信してくれます。
このメッセージのURLをタップすると、「AppStoreで開きますか?」と確認されます。
これに「OK」すると、Pathのダウンロードページを開くことができます。
これによって、潜在顧客の入力の手間を軽減し、デスクトップ/モバイル間での移動時の離脱を減らすことができ、本来獲得できていたはずの顧客の取り逃しを減らすことができます。
また、電話番号の入力以降、一度もタイプすることなくAppStoreまで辿りつくことができるのでユーザ体験を優れたものにすることにも成功しています。
さらに、ダウンロードしやすくするために単純なリンクを送信するだけの作業において、(恐らくこれがもう一つの大きなグロースハック的な目的だと察しますが)次のような利点もあります。PC上のランディングページ経由の(潜在)顧客について
- 電話番号をキーにして新規潜在ユーザのトラッキングを開始でき、
- ストアを開いたかどうか(= Acquisitionに成功したかどうか)をトラッキングでき、
- この後、AppleのAppStore内で実際にダウンロードしたかどうかはトラッキングできませんが、アプリの使用開始後にユーザが自身の情報(電話番号)を入力したタイミングで、ユーザを一意に特定することができ、
- この一連のグロースハックの正否を判断するための充分なデータを得ることができます(つまりこの施策自体の検証も兼ねることができます)。
特に、モバイルデバイス上でのAppStoreへの誘導(=Acquisition)に成功し、サインアップ(= Activation)もしてもらえて、ユーザが自身の情報を入力してくれている(= しっかりアプリを使い始めているということになるので、Engagementの成功にも近い)状態であることがわかるので、アクティブユーザに着実に近づいている大切な顧客を獲得するチャネルが、モバイル上ではなくて、PC上のウェブサイト上である可能性についても検証、学習することができます。
まとめ:
- 課題:PC上でPathのウェブサイト訪問者を離脱させることなくAppStoreに誘導したい
- 解決策:ランディングページ(トップページや共有されたコンテンツの個別ページ)上のダウンロードボタンに「SMSで携帯電話に送信」ボタンを設置し、ストアへのリンクをモバイルデバイス上に送信。
- 期待される効果:スマホアプリのPC上でのAcquisitionから、モバイル上(AppStoreやGoogle Play)上でのAcquisitionへの離脱を軽減でき、同時に、アクティブになりそうなユーザの獲得チャネルを検証することができ、さらに、このグロースハック自体に効果があるのかどうかの検証をすることもできる
ちなみに、Pathでは、最近になって、この施策自体が「A/Bテストの結果、通常のサインアップ程の効果がなかった」として、この機能の提供を停止しています。CEOのDave MorinがQuora上で回答しています。
さまざまな施策を試しながら、その施策自体の効果もグロースへの貢献という観点から定量的に測定し、素早く改善を繰り返していく姿勢が、とてもグロースハッカー的ですね。そして、もしあなたがグロースハッカーであるなら、「Pathが打ち切ったから効果がない」ではなく、「Pathでは効果がなかったとのことだけれど、自社の製品の場合、また、その対象とする市場やユーザ特性については、まずは効果があるかどうか実際に計測して検証してみよう」という姿勢がとてもグロースハッカー的であることを付け加えて、この施策のご紹介を終わりにしようと思います。
GrowthHacker.jpでは、シリコンバレーや日本、アジアのグロースハッカーの皆さんに取材をしながら、同時に、様々なプロダクトについて、グロースハック・アイディアの”リバースエンジニアリング”(=研究)をしています。今後も、このような事例を、適宜紹介していきます。日本のグロースハッカーコミュニティにご興味のある方は、Facebook Groupにご参加ください。
Originally published at growthhacker.jp.